2022-08-08
生活スタイルの変化で、和室がない家もあるのではないでしょうか?洋室は掃除がしやすいなどの便利な点がありますが、畳の匂いや畳の上を歩く感覚は和室ならではの魅力です。
畳には、匂いによるリラックス効果だけでなく、集中力を持続させる効果もあるという研究結果が発表されました。
そこで今回は、畳のさまざまな効果をご紹介します。畳の魅力を再確認していきましょう。
畳には集中力の持続効果があるといわれています。
北九州市立大学の森田洋教授は、畳の教室と一般の教室で学習機能にどのような違いが起きるのか調査しました。調査は小中学生323人を対象に行われ、畳の教室と通常の教室で算数の計算をさせて、その結果を比較しました。
結果は、畳の教室の子どもたちの方が、通常の教室の子どもたちよりも解答数が14.4%増えました。正解率には差がなかったことから、畳の教室の子どもたちの方が問題を早く解くことができた、つまり集中力が高まっていることがわかりました。
畳の教室で集中力が持続した理由として、森田洋教授は、い草の香りや畳の調湿作用による部屋の涼しさを挙げています。また、吸音性による静かな環境も問題に集中できた要因と考えられます。
環境による影響は年齢が低いほど受けやすいため、畳による集中力の持続効果は低学年になるほど期待できます。集中力が途切れやすい子どもにとって、畳がつくりだす癒し効果は集中力を持続させるには最適です。
畳の材料に使用されているい草の香りには、リラックス効果があります。新築の家を訪れたときや、畳の入れ替えをした際に深呼吸をしたくなるほどいい香りだと感じられるのは、リラックス効果があるからです。
い草の成分は、フィトンチッド、ジヒドロアクチニジオリド、α-シペロン、バニリンなどの芳香成分が入っています。それぞれの香り成分と効果を詳しくみていきましょう。
い草の芳香成分20%が、フィトンチッドです。松やヒノキなどの針葉樹林からの発散量が多く、森林浴を思わせるような森林の香りの源です。殺菌作用をもっています。
ジヒドロアクチニジオリドは、紅茶にも含まれる芳香成分です。この成分自体には香りはなく、他の香りを引き立たせます。
α-シペロンは、リラクゼーション効果が期待できる成分です。漢方薬やアロマオイルにも使用されています。鎮静作用や抗アレルギー作用があります。
バニリンは、リラックス効果の高い芳香成分として香水にも使用されている成分です。アイスクリームなどの食品香料としても使われています。
素足で畳の上を歩くと、歩き心地がとてもよく適度な弾力性が感じられます。畳の弾力は、発育期の子どもの足裏のバランス感覚を養うことに役立ちます。また、転んでも衝撃が少ないため、小さな子どもだけでなく足腰が心配な高齢者も安心して利用できます。
畳の弾力効果は、畳表に使用されているい草の中身に隠されています。い草は細くて長い繊維質の植物ですが、その中身はスポンジ状で空気を多く含んでいる構造になっています。い草をしっかりと編み込んで畳を作るため、弾力性が優れているのです。
畳床(たたみどこ)に使われている稲わらには、たくさんの空気が含まれています。そのため生活音を吸収する役割もあるのです。子どもが走り回っても、稲わらの中に含まれている空気がクッションの代わりになって音を和らげてくれます。
そのため畳の部屋に入ると、静かで落ち着く空間だと感じることもあります。音による近隣トラブルや、子どもが走り回って困る家庭は畳の部屋がおすすめです。
床の防音対策に悩んでいる場合、床の素材を変えることが一番です。畳なら音を吸収する効果や遮断してくれる効果があるため、防音対策に適している素材だといえます。
畳と防音マットやカーペットを組み合わせて使うことで、さらなる防音効果が期待できます。引っ越す際には、防音性能がどれくらいなのかを確認するとともに、畳のある部屋に引っ越すことも一つの選択肢です。
畳には、水分を吸湿・放湿する効果があります。そのため夏は涼しく、冬は暖かいという特徴があるのです。梅雨時季には除湿効果、室内が乾燥しているときは蓄えた水分を空気中に放出します。
和室の部屋は洋室よりも快適で過ごしやすいと感じるのは、畳の吸湿・放湿効果のためだといわれています。天然のエアコン機能が畳には備わっていると考えておきましょう。
畳に使用されている、い草のスポンジ構造部分が湿気を吸収してくれるのです。また、稲わらのポッカリあいた空洞部分が湿気を放出するため、快適な空間がつくりだせます。
畳一帖分の自然吸湿能力は約500mlといわれています。空気が乾燥しているときは、ほどよい湿気を吐き出すため、畳が見直されてきているのです。
夏はひんやり、冬は暖か、このようなことを畳の部屋で感じたことはないでしょうか?これは畳に含まれている空気が関係しているのです。
畳表のい草はもちろんのこと、畳床に使われている稲わらもスポンジ構造になっています。そのため、畳はたくさんの空気を含んでいる状態です。スポンジ構造部分に溜まっている空気が、夏の暑さを遮断してくれるため夏はひんやりとした感覚が得られます。逆に、冬場は冷たい空気を遮るため、暖かく感じます。
畳には断熱材の働きや、室内の空気を適温に保つ役割があるため、冬は暖かく夏涼しい畳の部屋が実現できるのです。
家の中で、二酸化窒素やシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドが発生することもあります。い草は、これらの物質を浄化して、きれいな空気にする機能があります。天然の空気洗浄効果が畳にはあると考えておきましょう。
この優れた空気洗浄効果は、い草だけの特性です。ほかの植物ではこの特性はみられないといわれています。畳が新しくても、古いものでも空気洗浄効果は同じように期待ができるため、アレルギー体質の人や子どもがいる家庭には、畳の部屋がおすすめです。
畳に使用されているい草は、食中毒の原因として知られるサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などに抗菌作用があると認められています。
また、日本人の5人に1人が悩んでいる水虫についても、効果があります。畳はフローリングに比べて水虫などの微生物が感染しにくい素材です。い草の成分が水虫菌の繁殖を抑えてくれるため、感染リスクが少ないといえるでしょう。
加えて、い草の成分は足の臭いも抑える効果があります。足が臭くなる主な原因は、汗腺・皮脂腺から発するアンモニアです。い草のスポンジ構造は、アンモニア臭を吸着します。さらに抗菌作用によって、足に付着している微生物の増殖で発生する腐敗臭を抑えられるのです。
畳の効能をお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?
畳に使用されているい草や稲わらは、人に優しい天然素材です。畳には、弾力作用や防音・遮音効果があるため、子どもや高齢者がいる家庭にもおすすめです。
また、抗菌作用やリラックス効果があるので、ハウスダストやアレルギーで悩んでいる人はもちろんのこと、ストレスを感じている人にも効果的です。
畳に関する研究で、集中力の持続効果も報告されています。子どもの勉強部屋を畳にすることで集中力アップにもつながります。