2022-08-08
和室に用いられる畳には、部屋の湿度を調整する役割やリラックス効果が期待できます。賃貸物件の場合は入居者が入れ替わるときに畳を交換することが多いと思いますが、実際のところ畳の寿命は何年なのでしょうか?
畳の寿命はメンテナンス状況にも左右されます。メンテナンスを怠った畳は、不衛生なだけでなく思わぬ怪我にもつながってしまいます。
当記事では、気になる畳の寿命や古い畳を使い続けるデメリット、畳の寿命を延ばすポイントなどをお伝えしていきます。
一般的に、畳の寿命は約10年といわれています。しかし傷んできたと感じても、交換やメンテナンスの目安や基準がわからないと、交換を依頼した方がいいのか判断がつきません。
また、畳の部位によっても寿命は異なります。「畳表(たたみおもて)」と「畳床(たたみどこ)」に分けて部位ごとの目安を紹介します。部位ごとの寿命の目安を参考にして、交換やメンテナンス時期を知る基準としてください。
畳表とは、畳の表面のゴザ部分です。
畳は天然素材であるい草で織られているため、香りがよく、美しい薄緑色が特徴です。しかし、使用するうちに畳は日光(紫外線)によって変色していきます。これは、い草に含まれるクロロフィルが紫外線によって変色する性質を持っているためです。変色や汚れがひどくなってきた場合には、メンテナンスが必要になります。
メンテナンスは、畳表だけを外して裏返す方法や、畳表と畳縁(たたみべり)を新調する表替えという方法で行います。裏返しの目安は、3年〜5年です。裏返した畳表はさらに3年〜5年使用できるため、畳表の寿命は6〜10年と覚えておきましょう。
畳床とは、畳の土台になる部分です。こちらもい草と同じ天然素材の稲わらをいくつも重ね作られています。最近では稲わらの代用品として、木材を圧縮したインシュレンボードとポリスチレンフォームを使用した畳床など、いろいろな素材が使われています。
畳床の寿命は10年〜20年です。しかし定期的なメンテナンスを行い、丁寧に使えば40年〜50年持続して使えるともいわれています。畳表が傷んでも畳床がしっかりしていれば、張り替えなどのメンテナンスで対応可能です。
古くなった畳や汚れた畳を使い続けることは不衛生なだけでなく、さまざまなデメリットやトラブルにつながります。
ここからは、古い畳を使い続けた場合のデメリットを紹介します。
古くなった畳は、毛羽立ちやささくれが目立ち始めます。これは、畳の表面が乾燥して傷ができてしまうことが原因です。
畳はい草の茎を乾燥させて作ります。乾燥のさせ方によって品質に違いが出るため丁寧に行いますが、近年中国製の畳では石炭乾燥を取り入れるところも出てきており、従来の石油を使用した石油乾燥よりもガサガサしやすくなるのが特徴です。そのような畳は、通常より乾燥の症状が早く出る傾向があります。
畳は乾燥して表面が傷つくと毛羽立ちやささくれが起こりやすくなるため、メンテナンスが必要となります。い草は耐久性がありますが、茎がとても硬いため、ささくれも硬く、足に刺さると怪我をする可能性があるため注意しましょう。
畳を長年放置しておくと、汗や汚れが畳表に染み込みます。畳は湿気を吸い取る特徴があり、ツメダニなどは湿気を抱え込んだ畳を好みます。さらに、ダニは人から落ちるフケやペットの毛なども好みます。
畳に住みつく害虫は、ダニのほかにもアリガタバチやチャタテムシがいます。とくにツメダニやアリガタバチのメスは、人を刺す害虫なので注意が必要です。
ダニの死骸やほこりはアレルギーの原因となり、咳やくしゃみなどの健康被害を起こす可能性があるため、定期的なメンテナンスが必要です。
年数以外にも畳の寿命を見分ける方法があります。畳の入れ替えをしてからどのくらい年数が経っているのかわからなくなっている場合は、こちらの方法で判断してみましょう。見た目や感触などは、判断がつきやすい方法です。
入れ替えをしたばかりの畳表は、鮮やかな緑色をしています。しかし、年数が経ち劣化していくと、畳表の色は黄色になっていきます。さらに劣化している場合は、黒ずんだ茶色に変色します。
畳表が黒ずんだ茶色に変色していたら、裏返しや張り替えのサインです。他にも、黒い筋が畳表にたくさんある場合や、直射日光により色が変色している場合も、畳表の寿命だと判断してください。
畳表の風合いの変化でも寿命を判断できます。年月の経過とともに、触り心地が悪くなってきます。畳を踏んだときにチクチク・ザラザラしている場合は寿命がきているサインです。さらに劣化すると、畳の上を歩いたときに足の裏にい草がつく場合もあります。
畳の光沢が薄れてきたときや、い草のささくれが多くなってきたと感じた場合は、裏返しや張り替えがおすすめです。気になる人は、畳表の風合いの変化を確認しておきましょう。
畳床のお手入れは重要です。お手入れを怠っている場合は、ダニが大量発生する場合もあります。
また、カビにも注意が必要です。湿気が多い部屋などは、拭いても取れないカビ臭さが残ります。これは畳の中にカビが発生していると考えましょう。使用年数が少なくても、畳から悪臭やダニが多く発生している場合は畳の寿命です。
畳を入れ替えてから一度もメンテナンスをしないと、畳の寿命は短くなります。この場合は、畳の入れ替えがおすすめです。
畳の上を歩いたときに違和感があったら、寿命がきたと考えましょう。本来の畳は硬く、安定しています。歩くと軋む、あるいはやわらかく沈み込むような感覚がある場合には交換が必要です。
10年〜20年近く、畳のメンテナンスをせず使い続けている場合は、寿命と考えていいでしょう。畳の上を歩いてみてフワフワする感触があれば、畳床の張り替えの目安だと考えてください。
畳の寿命を伸ばすためには、日頃のお手入れが重要です。普段から簡単にできるお手入れのポイントを紹介しますので参考にしてください。
重要なポイントは、換気と掃除です。
畳は水分を吸収する特徴があります。湿気を吸い取ってくれるメリットもあれば、吸い取りすぎて逆にカビやダニを発生させてしまうこともあるのです。
畳が吸収した水分を、部屋の換気と掃除をして逃がしてあげましょう。天気がよい日には窓を開けて換気してください。また湿気が多い梅雨時季には、エアコンや扇風機、サーキュレーターを使用して除湿することが大切です。
畳の部屋に布団を敷いて寝ている人は、布団を敷きっぱなしにしないよう注意してください。
人間は寝ている間に大量の汗をかきます。その汗は布団を通して畳にも多少伝わります。そのため、布団を敷きっぱなしにしておくと畳は吸い込んだ湿気を放出できなくなります。そこから、カビやダニの発生につながってしまうのです。
毎朝布団をたたみ押し入れにしまう時間がない人は、室内専用の布団干しなどを使用してください。畳が吸収した水分を逃がしてあげるだけで湿気がこもらず、畳の寿命を延ばせます。
室内で荷物を移動させるときや、家具の移動の際に畳を傷つけないように注意しましょう。
家具の移動で、い草が破れるとそこから劣化が始まります。掃除機をかける際も、畳の目に沿って掃除機をかけることがポイントです。なるべく表面に傷をつけないように掃除機をかけていきましょう。
猫を室内飼いしている場合は、畳でツメを研がせない対策が必要です。爪とぎを多めに置くなどして、畳を傷つけない方法を考えておきましょう。
今回は畳の部位ごとの寿命や、年数以外で寿命を判断する方法をご紹介しました。
畳には「畳表」と「畳床」があり、寿命はそれぞれ異なります。裏返しや張り替えを行ってから何年くらい経っているのか、一度確認しておくことが重要です。
年数がわからない場合は、色や風合い、感触などで畳の寿命を知ることができます。古くなった畳は健康被害を及ぼすため、メンテナンスが必要だと感じたら早めに対策することがおすすめです。