2022-11-14
自宅に畳の部屋がある方は、畳が劣化してきた際に新たな畳の購入を検討するかと思います。しかし、畳は何度も購入するものではないことから、買い替えの際にどんな畳を選べばいいのか分からない方も多いでしょう。
畳は全て同じように見えても、材料などの違いで数多くの種類があります。そのため、畳を新たに購入する際は、畳に関する基本的な知識を身につけておくことが大切です。
この記事では畳表・畳床・畳縁の3つに関して、それぞれの素材や選び方を詳しく紹介します。
畳表(たたみおもて)は畳の表面部分を指し、いぐさの茎などと麻糸で織ったござのことです。畳表に使用されるいぐさの本数は畳の見た目に大きく影響し、上質な畳ほど目が均等に詰まっています。
使用されるいぐさの本数の目安としては、下級品や普及品が約4,000〜5,000本、中級品や上級品が約5,000〜6,000本、高級品が約6,000〜7,000本です。使用されているいぐさの本数が多いほど畳表の地が厚く、重量も重くなります。
また、畳はいぐさの産地や長さ、いぐさを編み込む際に必要となる経糸の種類などによって品質が異なります。品質が高ければ高いほど高価になるため、畳を選ぶ際は設置する部屋の用途に合わせて選ぶことが大切です。
一般住宅の座敷や客間であれば、多少コストはかかりますが丈夫で綺麗な畳表がおすすめです。賃貸に住んでいる方や頻繁に畳を張り替える場合は、耐久性がなくとも安価で見た目の綺麗な畳表を選ぶと良いでしょう。
畳表にはいぐさと経糸が使用されており、高価な畳ほどいぐさの本数が多く、質の高い素材が使用されています。最近では中国のいぐさを使用している畳表が多く存在し、国産のいぐさを使用している畳表に比べて質は劣りますが、その分価格をおさえることが可能です。
また、天然のいぐさを使用せずに化学製品で作られた化学表も存在します。化学表は、日焼けしないうえに畳の上で激しく動いても傷つきにくく耐久性が高いのが特徴です。
ただ、化学製品で作られていることから、天然のいぐさの香りや雰囲気が楽しめないというデメリットがあります。
経糸には主に綿糸や麻糸が使われています。畳表は綿糸と麻糸のどちらか一方、あるいは両方を組み合わせて織り上げられており、経糸の種類や本数によって畳表のランクが異なります。
また、織り上げる際に綿糸と麻糸の両方が使用されている場合は、麻糸の比率が大きければ大きいほど耐久性が高くなるため、畳表を選ぶ際は必ず使用されている経糸も確認しましょう。
畳床(たたみどこ)とは、乾燥した稲わらを麻糸で縫い固めたもので、畳の芯となる部分のことを指します。畳床は畳表で隠されているため、普段は目につかない部分ですが、畳の弾力性や保湿性、断熱性、吸音効果などを大きく左右する非常に重要な部分です。
畳床に使用される素材にはさまざまな種類が存在し、素材によって価格や機能性、踏み心地などが異なります。畳床を選ぶ際はそれぞれの素材の特徴を理解し、用途や好みに適した畳床を選びましょう。
畳床の素材には、昔ながらの稲わらを原料としたものや畳ボードを使用したもの、ポリスチレンフォームを使用したものなどが存在します。
稲わらを原料としたものは、わらを何層にも積み重ねて圧縮されているため、耐久性や断熱性、保湿性に優れているのが特徴です。加えて吸音効果や防音効果も備えているので、集合住宅であれば騒音トラブル回避につながります。
次に、木質系の原料から畳用に作られた畳ボードを使用したものは、畳ボードが数層重なって床が形成されており、耐久性や調湿性、衝撃吸収性、吸音性などに優れているのが特徴です。
近年では、取り壊された木造建築や廃木材などを繊維化したボードが出ており、エコロジー素材としても注目を集めています。
そして、ポリスチレンフォームを使用したものは、断熱性や衝撃性、遮音性に優れているうえ軽いのが特徴です。ポリスチレンフォームを使用した畳床は、現在日本で流通している畳の約7割を占めています。
畳床の一般的な寿命は10年〜20年ほどですが、丁寧にメンテナンスを繰り返すことで40年〜50年は使用できるとも言われています。たとえ畳表が傷んでいても、畳床が劣化していなければ裏返しや表替えで対応することが可能です。
畳を長く使い続けるためには、室内の通気性を良くして湿気に気を付け、こまめに掃除や干陰干しをする必要があります。また、掃除機をかけるときや雑巾で畳を拭く際は、表面に傷がつかないよう畳の目に沿って作業することを意識しましょう。
畳にへこみができているときや、空気が入っているような感じがある場合は寿命が近いため、まるごと新調することをおすすめします。
空気には熱を伝えづらい性質があり、畳は空気を多く含んでいることから断熱性に優れ、冬は暖かく夏は涼しい空間をつくり出してくれます。
畳表に使用されているいぐさはもちろんのこと、畳床に使用されている天然素材の稲わらもスポンジ状になっており、空気を多く含んでいることから畳は断熱性に優れているのです。
畳縁(たたみべり)とは、畳の角を補強するためにつけられている部分であり、シンプルな無地のものや柄の入った柄縁と呼ばれるものが存在します。
基本的に選び方は自由ですが、部屋の壁紙や襖の色に合わせて畳縁を選ぶと一体感を出すことが可能です。濃い色を選べば部屋が締まった印象になるため、畳表をより綺麗に見せられ、淡い色を選べば部屋が優しい印象になり、洋間との相性も良くなるでしょう。
畳縁にはさまざまな種類が存在し、デザインや色によって部屋の印象がガラッと変わります。そのため、畳縁を選ぶ際は部屋の雰囲気を考慮したうえで、演出したい空間や自身の好みに合わせて選ぶことをおすすめします。
少し前までは主に綿や麻が使用されていましたが、最近ではポリエステルやポリプロピレン、ナイロンなどの化学繊維を使用した畳縁が主流になっています。化学繊維を使用した畳縁は、丈夫なうえに安価なのが特徴です。
一方で、天然素材の綿や麻が使用されている畳縁は、少し高価になりますがその分質感が良く、高級感を演出できます。ただ、日焼けで変色しやすいため、綿や麻の畳縁を選ぶ際は注意が必要です。
どうしても変色などの劣化が気になる場合は、丈夫なうえに安価な化学繊維を使用した畳縁を選ぶと良いでしょう。
平安時代から江戸時代までは、身分によって畳縁の柄や色などが区別されており、畳縁の種類には繧繝錦や高麗縁、紫縁、黄縁などが存在します。
繧繝錦は最も格が高い畳縁であり、天皇や上皇が用いていました。身近なものだと、雛人形の親王雛は繧繝錦の畳に座っています。
次に高麗縁は、白地に雲型や菊の花などの紋を黒く織り出したもので、現在は神社仏閣の床の間や座敷などで見ることが可能です。
そして紫縁は僧侶や学者が、黄縁は侍などの位の人々がそれぞれ用いていました。このように、昔は畳縁の柄や色で身分が区別されていたのです。
畳縁は、畳の装飾性やデザイン性を高めるだけでなく、耐久性などの機能を保持してくれる非常に重要な部分です。
畳縁があることで、畳表の角の摩擦を防げるうえに、隙間をつくらずに畳を敷き詰められます。部屋の印象を決めるだけでなく、畳を長く使い続けるためにも畳縁は重要な役割を担っているのです。
畳を選ぶ際は、畳表・畳床・畳縁の3つの部分をそれぞれチェックし、耐久性が高いものや汚れが目立ちにくいものなど、自分が求める条件に合った畳を選びましょう。
また、値段によって機能性が異なるため、安いからという理由だけで畳を選ぶと購入後に後悔する可能性があります。どうしても畳選びで失敗したくない方は、専門店に自身の要望や部屋の雰囲気を相談したうえで購入することをおすすめします。