2022-11-21
畳は畳床・畳表・畳縁の3つから構成されたものです。中でも「畳床(たたみどこ)」は、畳の芯にあたる部分になります。畳床は表面からは見えないため、あまり素材にこだわっていないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では畳床の種類や素材について、それぞれの特徴や長所、短所を分かりやすくまとめました。この記事を最後まで読めば、自分に適した畳床の選び方が分かるようになるので、参考にしてください。
藁(わら)床は稲わらが圧縮された畳床で、昔から使用され続けてきた素材です。稲わらを乾燥させ、圧縮して縫い付けています。2000年代初頭あたりに建てられた家では一般的に使われている素材です。
しかし今では良質な国産の藁や、藁床を生産する業者が少なくなったのにくわえて、建材床と比較した場合にコストが高いため、現在の新築住宅ではほとんど使われておりません。
藁床は調湿効果に優れている畳床です。藁床は水分を吸収し、放出する効果があります。さらに藁と藁の間に空気層があり、天然の断熱効果が期待できるため、フローリング床と比べると冬場でも暖かい部屋を維持できます。
また、藁床は稲わらという天然素材だけを使用しており、化学物質に汚染されるリスクがありません。
くわえて弾力性に優れており、柔らかな踏み心地も藁床の長所のひとつです。柔らかなクッション性が足の負担を軽減し、転んだ場合もケガをしにくい構造となっています。
藁床は水分を吸収するメリットがありますが、逆に言えばこの吸湿・放湿機能がダニやカビのリスクを高める恐れもあります。
現代における高気密住宅は、昔の家と比べて空気の循環性に劣っています。空気の循環が悪いことで水分を放出できず、湿気がこもってしまいます。したがってカビやダニの原因となってしまうため、注意が必要です。
藁サンド床は間にポリスチレンフォーム(発泡スチロール)やエコボードを挟んでいる畳床です。感触が藁床に近く、藁床と建材床のメリットを併せ持っています。
藁サンド床は畳床に近い感触がある素材ですが、畳床と比べると軽量です。したがって少ない力でも気軽に畳上げや畳干しが可能です。
また、藁の使用量が少ないため藁床と比べると安価です。間にポリスチレンフォームやエコボードを挟んでいるため、ダニやカビの発生を抑制しています。
さらにポリスチレンフォームの効果として断熱性にも優れています。畳全体が湿気で覆われるのも防ぐことができるため、ダニやカビの繁殖もある程度防ぐことが可能となっています。
藁サンド床のデメリットは、ダニの発生リスクがある点です。
もともと、藁サンド床にはポリスチレンフォームが使用されていました。ポリスチレンフォームは弁当の容器や梱包材などにも使用されている、有害性の低い素材です。しかし破棄する際に環境問題の要因となってしまいます。
近年ではポリスチレンフォームのリサイクルを解消するため、ポリスチレンフォームの代わりに100%リサイクルが可能なエコボードを使用しています。このエコボードの使用によって、ダニやチャタテムシといった害虫の発生リスクが高まってしまいます。
わらが主流の中で、インシュレーションと呼ばれる材料で作られるようになった種類です。使用感は従来のわら床と似ていながら、防湿性や耐久性が高いことなどⅠ型建材床ならではの違った魅力があります。
Ⅰ型建材床は、インシュレーションボードを使用した畳床です。インシュレーションとはチップ木片を圧縮して固めたものです。一般的な畳床に使われるわら床と感触が似ているため、使用感そのものはわら床とそこまで違いません。
しかし、わら床と比べると湿度に強いことによるダニの発生率の低さ、優れた耐久性などが魅力です。加工のしやすさやリサイクル性もあるため、環境にも配慮されています。さまざまなメリットがあるため、近年では多くの畳床に使用されています。
多くのメリットがあるI型建材床ですが、その分だけ比較的価格が高いです。また、わら床よりも重く、耐久性は高いものの傷がつくと修理しにくいのも留意しなければなりません。価格や軽さよりも、耐久性や防湿性の高さを重視したい場合はおすすめです。
Ⅱ型建材床では、上部にⅠ型建材床にて使用しているインシュレーションボード、下部にポリスチレンフォームを使用している種類です。Ⅰ型建材床の発展版ともいえるⅡ型建材床には、これまでよりも軽量で安価なことなどの特徴があります。
Ⅱ型建材床は大量生産可能なため、わら床よりも比較的安価なのが最大の特徴です。ポリスチレンフォームを使用していることで断熱性が高いことや、衛生面に優れているという魅力があります。
また軽いことも大きな魅力です。軽量なため床板への負担を軽減でき、さらには施工者にも優しい設計となっています。畳工事の作業が効率化されるため、マンションやアパートなどの集合住宅でよく使用されています。
ユーザーには断熱性や衛生面、生産者には効率的生産できる点、工事業者には作業そのもののしやすさといったように、多くのメリットがあるといえるでしょう。
下部にポリスチレンフォームを縫い付けるかたちで使用しているため、張り替えがしにくいです。そのものの寿命も短く、長期での使用は向いていないでしょう。また、通気性に乏しいのも短所です。
Ⅲ型建材床とは、ポリスチレンフォームを上下でインシュレーションボードが挟むという構造の建材畳床を指します。湿度や害虫など、従来の畳にとって懸念要素だったものに対して強さを発揮するのが特徴です。
Ⅲ型建材床は人工素材で構成されるため虫が発生しにくいことや、衛生的に優れている面が大きなメリットです。また、ポリスチレンフォームを挟みこんでいることで、断熱効果も期待できます。
さらにわら床よりも軽量かつ安価のため、大量生産が可能です。畳工事の作業効率を向上できるのも魅力です。ユーザーだけでなく、生産者や工事担当者それぞれに大きなメリットがある種類といえるでしょう。
軽量で安価なⅢ型建材床ですが、一方で耐久性が低いことや寿命が短いこと、劣化やキズが付いた際の修理の難しさなどがデメリットです。Ⅲ型建材床は高密度フォームを用いれば、脆弱な耐久性をある程度カバーできるとされていますが、基本的には耐久性に難があると考えておきましょう。
また、工業製品のためリサイクルしにくく環境面を考えると好ましくありません。
畳床はクッション性や断熱性にかかわる、芯畳の芯となる部分です。普段は見えない箇所ですが、畳床の種類や素材によって重さや耐久性のほか、衛生面などにも違いがでてきます。
畳床が劣化した際は、新畳との張り替えが必要になります。畳床の素材における細かな違いを理解しておけば、張り替えの際にも参考になるでしょう。